筑波大学数理科学研究コア (RCMS) では、分野横断的な研究交流の一助となることを目指し、互いの研究分野の相互理解を推進する場として「RCMS サロン」を開催しています。
今回は「数値解析の理論と応用」というテーマで3名の講師の方々に講演していただきます。
日時:2025年12月18日(木)15:00 ~ 18:00(Tea timeを含む)
場所:筑波大学 自然系学系D棟 509室
15:00 -- 15:15 Tea time
★ 15:15 -- 15:50 及川 一誠 氏(筑波大学数理物質系)
タイトル:「常微分方程式に対するturbo post-processing」
要:常微分方程式に対して、連続Galerkin解は計算区間上でメッシュサイズに関してoptimal orderで収束し、各分点においては超収束することが知られている。本講演では、分点における超収束性を活用し、連続Galerkin解を繰り返し後処理を行う方法(turbo post-processing)を提案する。提案手法では、後処理を1回行うごとに収束次数が1ずつ向上することを数値計算結果とともに報告する。
★ 16:05 -- 16:40 谷口 靖憲 氏(東京大学大学院数理科学研究科)
タイトル:「Space–Time有限要素法におけるDirichlet境界安定化: 1次元弾性体問題への適用例」
概要:Space–Time有限要素法は空間離散化をGalerkin法、時間離散化に不連続Galerkin法を用いる時空間有限要素解析手法として知られる。時間方向にも基底関数による補間を用いるため、変数や関連する物理量の時間分布を捉えられるものの、その妥当性に言及する研究は見られない。我々は、Dirichlet境界条件を強制する「反力」の時間変化が、ナイーブな計算方法において、時間方向に非物理的な数値振動を起こす現象を確認した。これを受けて、本研究では、数値振動を抑制するための境界安定化手法を開発した。本講演では、1次元の弾性体を題材とし、安定化手法の定式化、およびその効果を数値例を交えて説明する。
★ 16:55 -- 17:30 堀江 正信 氏(株式会社RICOS)
タイトル:「対称性・保存性を厳密に満たす機械学習手法による高速な数値解析」
概要:数値解析の高速化のための技術として機械学習が着目されている。しかしながら、実用的な数値解析データは高次元・可変次元かつその上の分布も複雑なものであり、典型的な機械学習手法では実用的な精度・計算速度・汎用性を実現することが困難である。そこで講演者らは、数値解析の手法を導入することによって、物理現象が持つ本質的な性質である対称性・保存性を厳密に満たす機械学習手法を開発した。本講演では、物理現象を取り扱う機械学習手法として著名な Physics-Informed Neural Network (PINN) などとの相違点を明確にしつつ、講演者らの手法の概要および適用事例について紹介する。
17:30 -- 18:00 Tea time
世話人:照井 章、及川一誠(筑波大学 数理物質系)
E-mail:rcms-salon at math.tsukuba.ac.jp ("at" を @ に置き換えてください)
今回のRCMSサロンは科研費基盤研究 (C) 22K03432「HDG 法における反復型領域分割法の開発」(研究代表者: 及川 一誠),科研費基盤研究 (C) 25K07662「数式処理によるロバストかつ効率的な動作計画に基づくマニピュレータの制御系の開発」(研究代表者: 照井 章)の支援を受けています。
本RCMSサロンは筑波大学大学院数学学位プログラム開設授業科目「数学フロンティア」の対象です。