筑波大学数理科学研究コア (RCMS) では、分野横断的な研究交流の一助となることを目指し、互いの研究分野の相互理解を推進する場として「RCMS サロン」を開催しています。
今回は「フラクタルの数理」というテーマで3名の講師の方々に講演していただきます。
日時:2025年7月3日(木)15:15 ~ 17:30
場所:筑波大学 自然系学系D棟 509室
★ 15:15 -- 15:50 金子 元 氏(数理物質系)
タイトル:「フラクタルの基礎」
概要:古典幾何学の主な研究対象は、滑らかな曲線や平面といった、局所的に線形近似可能な図形です。一方、フラクタルが扱う幾何学的対象は、スケールを変えても微細構造が失われないという特異な性質を持ちます。自己相似図形はフラクタル図形の重要な例です。本講演では、フラクタルの基礎およびいくつかの例について時間の許す限りご紹介いたします。
★ 16:05 -- 16:40 森 龍也 氏(数理物質系)
タイトル:「ナノフラクタルとテラヘルツ帯ダイナミクス」
概要:原子スケールにおけるフラクタル構造とダイナミクスの研究は1990年代頃に活発であったが、テラヘルツ帯におけるフラクタルダイナミクスの構造的起源は不明瞭なままである。本講演では、最近の大規模な分子動力学シミュレーションの結果を用いて、その起源を再考する。また、ガラスにおけるテラヘルツ帯の普遍的励起であるボゾンピークとの関係性についても議論する。
★ 16:55 -- 17:30 立木 秀樹 氏(京都大学大学院人間・環境学研究科、京都大学総合人間学部)
タイトル:「フラクタル・イマジナリー(ハイパー)キューブの射影」
概要:シェルピンスキー四面体は、直交する3方向から正方形に射影されますが、それ以外にも正の面積をもつ像を与える射影方向が複数存在します。本講演では、より一般的なクラスである「Digit Set が層構造をもつフラクタル・イマジナリーキューブ」に対して、どのような方向から射影したら正の面積が得られるのか特定できましたので,その結果を紹介します。また、その4次元拡張となるフラクタル4次元立体が、正の体積をもつ3次元立体に射影される方向についてもお話しします。
本講演では、こうした数学的結果に加えて、フラクタル立体モデルを回転させたときに影が連続的に変化する様子や、フラクタル4次元立体の射影像を3Dプリンタで出力した実物モデルも紹介しますので、視覚的に楽しんでいただけたらと思います。
世話人:佐垣 大輔(筑波大学 数理物質系)
E-mail:rcms-salon at math.tsukuba.ac.jp ("at" を @ に置き換えてください)
今回のRCMSサロンは科研費基盤研究(A) 25H01107「大規模複雑データの理論と方法論の深化と展開」(研究代表者: 青嶋 誠)の支援を受けています。