第14回 筑波大学 RCMS サロン 「機械学習における数理」
筑波大学数理科学研究コア (RCMS) では、分野横断的な研究交流の一助となることを目指し、互いの研究分野の相互理解を推進する場として「RCMS サロン」を開催しています。
今回は「機械学習における数理」というテーマで3名の講師の方々に講演していただきます。
要項
日時:2024年12月12日(木)15:15 ~ 17:30
場所:筑波大学 自然系学系D棟 509室
プログラム
★ 15:15 -- 15:50 矢田 和善 氏(数理物質系)
タイトル:「正則化パラメータに依存しない高次元特徴抽出法について」
概要:ゲノム科学などの現代科学の1つの特徴は、データがもつ次元数の膨大さにある。このような高次元データに対し、従来の統計解析法では推測に精度を保証することができない。例えば、平均ベクトルや共分散行列などの次元数と同等もしくはそれ以上のオーダーの要素数をもつ特徴量の推定では、高次元において巨大なノイズが発生する。推定対象にスパース性を仮定できる場合、Lasso等によるスパース推定が考えられる。しかし、そこで使用する正則化パラメータの選択には、計算量や安定性の問題がつきまとう。本講演では、高次元特徴量の巨大なノイズを高次元漸近理論により正確に見積り、それを除去することで、正則化パラメータに依存しない新たな特徴抽出法を提案する。本講演は、青嶋 誠教授と海野 哲也氏との共同研究に基づきます。
★ 16:05 -- 16:40 中山 優吾 氏(日産自動車 総合研究所)
タイトル:「自動車工場におけるエルゴノミクス評価の数理モデル」
概要:製造業では作業者の身体負荷を定量的に評価するエルゴノミクス分析が重要である。最新の画像認識技術と機械学習アルゴリズムを組み合わせ、作業映像から自動的に姿勢評価を行うシステムを構築した。この手法により、大規模かつ長期的なエルゴノミクス分析が可能となった。本発表では、システムの理論的背景と実践的応用について議論する。
★ 16:55 -- 17:30 五十嵐 康彦 氏(システム情報系)
タイトル:「ベイズ推論に基づく小規模化学実験データの変数選択 」
概要:マテリアルズインフォマティクス(MI)を用いることで、材料科学においても、データ駆動型研究への関心を高めている。しかし、機械学習を適用するための十分なビッグデータが常に用意されているわけではない。もし小規模データを効果的にデータ科学的アプローチで活用できれば、エネルギーや資源、コストの消費なく研究活動を加速できる。本発表では、2次元ナノ材料を得るための剥離プロセスの制御などのモデルケースを導入し、小規模データの活用に焦点を当てた新しい概念としての小規模データに対するMIについて述べる。また、小規模データの解析において、ベイズ推論に基づく信頼性を備えた線形回帰モデルの構築を行う。本発表ではさらに、事前知識を取り入れることが可能なベイズ推論を用いた最新の大規模言語モデルと組み合わせた小規模データの解析についても紹介する。これにより、小規模データ駆動型の化学および材料科学の新たな可能性に繋がると考えている。
お問い合わせ先
世話人:矢田 和善(筑波大学 数理物質系)
E-mail:rcms-salon at math.tsukuba.ac.jp ("at" を @ に置き換えてください)